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県民に耐えがたい痛み――日本共産党県議団長・きしの知子さんに聞く

狙いは万博・空港の財源確保
財政再建は放棄、借金地獄に

 「県民に耐えがたい犠牲を押しつける」といわれる「改訂愛知県第3次行革大綱」。昨年12月17日に策定された、そのおそるべき内容について日本共産党県議団のきしの知子団長に聞きました。


「改訂愛知県第三次行革大綱」とは
 1998年に策定された「愛知県第3次行革大綱」(99年度〜2008年度の10年計画)の3年間の実績をふまえ、万博・空港の推進を中心とした「新世紀へ飛躍―愛知2010計画」を全面的にすすめるために改訂したもの。02年度から3年間に集中して取り組む118項目、2008年度までに取り組む37項目を数値目標をあげ示しています。

 ――第三次行革大綱の改訂版だといいますが。
 「県庁改革プログラム」という副題がついていますが、ねらいは別です。県民世論に反して特別養護老人ホームはすべて民間に委譲、総合保健センターや名東ふれあい広場は廃止、勤労福祉会館は統廃合や地元に移管する。こういうものが目白押しです。
 その典型は7つの県立高校と篠島など4つの分校をつぶすという計画です。そのために生徒たちは地元の高校に行けなくなります。福祉医療や教育を充実してほしいという県民の願いを聞こうともしていません。

 ――改訂版の特徴はなんですか。
 もともと愛知県の福祉・教育は最低水準です。それなのに、神田県政は福祉施設などありとあらゆる補助金を削ってきました。
 福祉を担う人たちは仕事を続けたいが、食べていけない、体はボロボロになるという状況で、充実は待ったなし。県議会で「憲法25条の生存権をおびやかしている」と追及しても、神田知事は「違反していません」と開き直ってきました。
 今回は補助金のカットどころか、高校をまるごとつぶし、公的施設の廃止やリストラを強く打ち出しています。増設が必要な特別養護老人ホームまで切り売りするというのです。
 入所待機者が常時3千人から4千人もいる特別養護老人ホームを民営化すれば、コスト削減でサービスが下がり、つぶれるところも出るでしょう。小泉改革と同じく、お金のない人は命もないというしくみに変えようとしています。

第三次行革大綱にもとづく削減額(単位:億円)

人件費

補助金

他経費

事業廃止

1999年度

390

199

794

242

1,625

2000年度

407

63

335

87

892

2001年度

207

12

73

292

1,004

262

1,141

402

2,809


 ――赤字の県財政を立て直すためでは?
 神田知事は歴代知事の中でも“借金王”です。就任3年間で仲谷知事が2200億円、鈴木知事が2500億円の借金(県債残高)を増やしたのにくらべ、神田知事は5800億円です。倍速で借金を増やしています。
 鈴木県政の継承というだけでなく、負の遺産をさらに拡大し、愛知県を借金地獄におとしこむ役割を果たしています。まともな知事なら、この借金をどうするかを第一に考えるでしょうが、先の見通しもなく増やす。破れかぶれとしかいいようがありません。
 総額3兆8千億円の借金を減らすには、万博・空港をやめて県政を転換するしかありません。来年度も1900億円の税収不足が見込まれているのに、それでも税金の使い道を改めない。市町村合併をにらみながら、愛知県の開発会社化を極限まですすめるものです。

 ――では、何のための行革ですか。
 第三次行革では教員2500人、県職員1500人を削減する計画でした。それでは生ぬるいというので、30人学級が全国的な流れとなるなかで、改訂版は教職員を1300人、県職員は倍の3000人を減らして財政削減と効率的な仕事をするとしています。
 競争、効率がすべてです。一方で無駄遣いは続けます。とくに「愛知2010計画」の道路建設はけた違いです。神田知事は就任以来、県債を八千九百五十六億円発行していますが、この三割の二千六百億円が道路建設のためです。“道路マニア”としかいいようがありません。
 行革の中でも、手をつけないのが談合と天下りです。中部国際空港は「談合空港」といわれます。道路公団は県と国の職員の天下りが圧倒的で、トップは月給約100万円、4年いると退職金が2千万円です。
 この癒着にメスを入れず、手をつけるのは県民の福祉、教育、雇用、災害、くらしの全ての分野です。
 公共事業を半分にすれば毎年1800億円の削減、売れない工業用地の造成をやめ、開発型の第三セクターには参加しないようにするなどでむだを省き、県債発行を抑制すべきです。

 ――そんな「行革」をすすめようとしているのは?
 第三次行革大綱の改訂を審議した懇談会委員には、財界のシンクタンク「東海総合研究所」調査研究部長、トヨタ自動車総務部長が顔を出しています。その答申を受けた「行政合理化推進会議」(座長・神田知事)のメンバーには自民、民主、公明議員団の代表が並んでいます。自民、公明、民主などの与党では、県財政の再建はできません。
 自民党県議団は昨年12月、「行革断行」を神田知事に迫りました。県議団に行革推進プロジェクトチームをつくり、分野ごとに検証したとしています。そこでは「民でできるものについては官から撤退」すべきであるとして、住民の福祉、暮らしを守る自治体としての役割の放棄を迫っています。

 ――撤回への展望は?
 来年度から乳幼児医療費を四歳未満まで無料にするといいますが、これは県民運動の大きな成果です。暴力をうけた女性の“かけこみ寺”である成願荘を廃止から守ったのも県民の運動です。
 学童保育、30人学級と運動をすれば道はひらけます。ホームレス、雇用、教育、人権、いま加速度的に実る時代です。そういう運動が万博、空港、伊勢湾口道路、首都機能移転をやめさせる大きな力に広がっていくでしょう。
 しかし、大型開発のムダ使いはそのままで県民要求を実施すれば、財政破たんは早まるばかりです。神田県政はすでに極限状態まできています。
 藤前干潟の埋め立て、海上の森や幡豆町での開発事業の縮小・断念は、愛知県民が全国に示した勇気と良識だと思います。そんなたたかいをなしとげた県民の力で、神田県政を変え、知事選、いっせい地方選、総選挙に勝利しましょう。

(2002年1月27日付「愛知民報」より)

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